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ともやのスペイン通信 - 第29号 岩山の香り

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m_perfil.gif第29号 岩山の香り2004/06/12 9:00 am

日本のみなさんには誠もって申し訳ない話だが、梅雨で息の根も止まりそうな蒸し蒸しから解放されていて実に幸せ。おかげで脳みそはもちろん、体質までがスペインの乾燥に順応してしまって「乾」には強くなったよ。水は馬並みにガブガブ飲むんだが、汗は即蒸発してくれるんでサラサラ。

これから5ヶ月間ほどはまあ雨もなく、気温と乾燥度は日増しに上昇してゆく。昨年に引き続いて猛暑が予測されており、こうなるとお決まりの山火事のシーズン到来だ。山火事の原因は万国共通で失火・付け火・自然発火なんだが、スペインの場合2、3番目の理由が主流のようだ。

付け火は放牧社会では必要悪のような伝統で、来年のよい牧草を希求しちょっと内緒に火種を残して帰る…わけらしい。しかし近年は羊・山羊の放牧が少なくなり、その必要性もなくなったようだし、第一そんなことは黙認してもらえない。

一方、自然発火はかなり際立ってきている。カナダやUSAのように大森林が摩り合うような木々はもちろんない。3mにも満たない藪なんだ、自然火災の生みの親となっているのは。

この低木をアラブ語の「藪」から出たハーラ jara と呼ぶ。木全体から揮発性の高い脂を滲出させ、その発火点が55度くらいとかなり低いため、真夏の太陽に焼かれるとブッシュファイアとなるわけ。

甘い香りに酔っ払うよハーラはハンニチバナ科ゴジアオイ属のシスタス、学名 Cistus Ladaniferus L のこと。地中海地方やカナリア諸島の岩だらけ(粘板岩や珪質岩)の乾燥した山地にしか自生しない。イベリア半島では南半分の、夏に乾燥のいちじるしい地方に群生し、15種類ほどある。

地元の人たちは冬になると幹や枝でこたつ用のホタ炭をつくったりする。古い幹からは「ハーラの蜜」と呼ばれる白い乳液がにじみ出る。これを集め、酸化して黒褐色になったものを団子のように丸めて保存し、甘味料としてドーナッツ作りなどにも使った。

医薬用としては日本の熊の胆のような万能薬として、とくに咳止めやリウマチ性関節炎には効き目があったらしい。

先ほども書いたがハーラはねばねばした樹脂(ラダナム)に覆われている。とりわけその葉についている樹脂は、山羊をハーラの藪の中に入れてヒゲについたものを集めて洗い、保存した。これが地中海世界では最高級の香油として珍重され、中世ではバニラエッセンスと同格に取り引きされて女性たちはラブダナム (labdanum) の蒸気や煙で身体や衣服に香をふくませた。精油は現在は蒸留して抽出するが、香水作りで香りとなめらかさを出すため、または揮発保留剤としても利用されている。

ハーラの実(種)は退化性が低く、年月がたっても発芽率は高く、とくに100℃くらいの高温に接した後に雨がくるとすぐ芽を出す。だからハーラの混生している松林などが火災に遭うとハーラの藪だらけになってしまう。それにユーカリと同じように毒素が他の植物を死滅させ、何キロにもおよぶ広範囲にハーラだけが群生する風景もめずらしくなく、だいたい3?6月頃に全山満開となる。

個々の花は、ハンニチバナ科というぐらいだから長持ちはしないが、次々と開花するので山全体としては半月ぐらいは満開状態が続く。その間むせかえるような甘い香りが全山を包み込む。

木陰は望むに無理で森林浴とはいえず、でも香浴にでかけたり、風下では500mほど離れたところでも香気が漂ってくるので立ち寄ったりする。牛や羊などの家畜の糞の臭いが充満した村で仕事をしての帰りに満開のハーラの山に出合ったりすると、つい深呼吸を繰り返しながらTシャツやズボンを手でバタバタさせて足踏みしている自分がいる。苦笑。そして英国人がロックローズと呼ぶのがなんとなく頷ける。バラは気高い花だもんな…。

ハーラの精油「ラブダナム」はヨーロッパではよく薫香ロウソクに混ぜたりしているが、この香りは精神を集中させる作用があるとか。爺もこの甘たるい香りにあたりすぎて精神が一点に集中しちゃって、2つのうち1つは忘れてしまうようになったのかなあ。歳のせいではない、と本人は突っ張りたいのだが。

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