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ともやのスペイン通信 - 第55号 洞穴のひろい物

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m_perfil.gif第55号 洞穴のひろい物2005/11/19 9:00 am

tronchón

50号のモレーリャの旅のおりに偶然買えた、これぞ正真正銘のトロンチョンチーズの誘惑があって、今日は中休みと決め込み、朝昼兼用の朝食を腹いっぱいつめこんで前回の54号とは反対にアルカニースの寝城から内陸へ回り込むことにした。

チーズを手造りしている若いばあさん一家は、最短距離の地道を走り継いで90km南下した谷底の一軒家に住んでいる。ところが30kmほど走ったところで鍾乳洞の案内板が目に入った。前々から気になっていた2万5千年前の後期旧石器時代のモリーノス人 hombre de Molinos の人骨が発見された洞穴だったんで、ついでだから覗いてみる気になった。

行き止まりの山道を谷懐に沿って8km。急に広い駐車場と山小屋風の建物が現れて、ここが終点。ところがこの切符売り場兼用の休憩所が今日のわしの行動を一変させることになってしまった。

この時期の洞穴案内はお客が少ないので1時間毎。まだ40分も間があるので、先着の4人にならってコーヒーを飲みながら陳列棚を眺め回していた。ポテトチップスやひまわりの実、ポンはぜなどの駄菓子類と並んでガラスケースにチーズらしいものが入っている。嫌いじゃないわしは暇つぶしに近寄ってみた。なんと、若ばあさん一家のトロンチョンチーズではないか。それも前に買った時と同じ1月3日製だ。なんとも不思議で偶然の対面に心臓が踊った。

チーズづくりの若ばあさんはここの店主のお兄ちゃんの親戚だとわかり納得。そんな間柄なので特別に1、2個だけ置かせてもらっている選ばれた場所なんだ、とお兄ちゃんは誇らしげに胸を張った。若者の純朴さと、わずか1ユーロ(現在約140円)しかない価格差に感激して2個のうちの1個をわけてもらった。

Gruta de Cristal思いがけなくチーズが手に入り、急にゆとりがでてきたところで洞穴入場の案内があり、こんどは急な石段を脚の短い東洋人が大股で100段あまり登らされて膝が笑ってしまった。

撮影禁止で役場のパンフを借用したが、本物はうんと白い「羊の毛」と命名された細い乳白色で、ガラスのようにキラキラと輝いていた。針のような鍾乳石は風圧のためにすべて横向きに並び壁面をつくっている。人間のたどり着くことのできない大自然の深い余韻を心に残してくれた。

、スペインにまだ徴兵制が残っていた頃にイタリアに駐屯したことがあるという村職員の案内人の若者は、石段を一段降りたら立ち止まることを繰り返しながら、生まれ育ったモリーノス村への思い込みを交え、さも10年来の友に語る親しみをこめてこちらの関心事に答えてくれた。まだ独身だと言っていたが、昼食の時間に遅れてしまい、おふくろさんに叱られたんじゃあないかな。

若者の後を追ってわしも粉引き水車(風車)を意味するモリーノス Molinos ;の村へと下った。この村は人骨が出たぐらい古い地帯だが、ローマ時代の痕跡はなさそうだ。8世紀の頃からアラブ人の居住地となり、両側を谷で削りとられた絶壁上の城下町だ。16世紀ごろには紙を生産したらしく、禿山となってしまい、カラトラバ騎士団領としてもっぱら近辺の牧羊の中心地として栄えた。そうして目の黒いアラゴン種からのチーズつくりが現在に引き継がれている。

チーズといえば家畜を飼っているところなら世界中どこでも造っておるが、京都や飛騨高山の漬物のようにごく小さな地域ごとにそれぞれ特徴をもつもののようだ。ナポレオンが名付け親といわれるカマンベール。南仏のロォックフォールのブルーチーズはフランスを代表する世界の逸品だ。

ピレネーを越えたスペインではこんなフランス風と、アラブ風で塩気の強いものが共存している。モリーノス村と同じアラゴン種の羊を飼っているピレネー寄りのアラゴン地方からお隣のナバーラ地方にかけて生産されるロンカールチーズ。その他カブラレス、マンチェーゴ、テティーリャ、ムルシアなど、かなり名の通ったチーズが多い。

大別して未醗酵の白いフレッシュ、熟成した半硬質、完熟した硬質がそれぞれある。フレッシュとその油漬けはアラブの伝統だ。北部ガリシア地方産のテティーリャと呼ぶおっぱい型のものは2日ほど前の大福のように表面は固めだが、なかはカマンベール風に柔らかで口当たりが滑らかだ。古い餅のように歯が立ちにくいほど硬いものもある。かつて日本の女流料理家が「あれはチーズの中へパセリを刻み込んだものです…」と説明した青カビ入りのブルーチーズも種類が多く、カブラレスはその代表選手。そうやって各地のチーズを漁るのはなかなか楽しいものだ。

チーズは乳に動物の胃酸を加えて掻きまわし、絞って水分をとりのぞけばフレッシュができる。だいたい2週間はそのままで食べられる。わしは渡西した頃、豆腐が食べたくてこのフレッシュチーズにしょう油をかけて食べたものだった。牛乳のチーズは味が柔らかで一般向き。羊は強く、山羊はもう少し癖がある。食べ慣れてくると、羊か山羊でないと物足りなくなってくるから慣れとは恐ろしいものだ。

モリーノス村章

当然のことながら昼飯にはありつけず、河川敷の駐車場で仕入れたばかりのちょっぴり塩辛いモリーノス村産のチーズを肴に、ぽっかり浮かんだ千切れ雲を眺めながらノンアルコールビールを飲んだ。それがなんとなくゆったりとして、うまかったなー。そりゃね。スペイン大使がマリーアントワネットにアルカニース(今回のわしの寝城)のうなぎとトロンチョンチーズを送り、彼女を虜にしたという。ドンキホーテにも出てくるそのトロンチョンが後部座席に鎮座ましますゆとりよ。

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