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ともやのスペイン通信 - 第71号 魂とハゲワシ

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m_perfil.gif第71号 魂とハゲワシ2007/10/19 9:25 am

めずらしく『誰がために鐘は鳴る』の舞台となったグアダラーマ山脈の上には雲ひとつない。涼やかな秋日和。前号の挿絵「不滅の魂を運ぶハゲワシ」をみに出かけた。

今回はティエルメス遺跡よりさらに50キロメートルほど北西に足を伸ばした。目的地は、ティエルメスと同じくケルト=イベリア族アレバコ人の集落だったマデルエロ Maderuelo 村とその近辺だ。ここはドゥエロ河の支流リアッサ川が深く浸蝕した石灰岩の峡谷で、スペインでは一番に密度の高いハゲワシの生息地となっている。高さ100メートル以上もある屏風状の岩壁の両側には、長さ2キロメートルほどに渡って750羽ほどが営巣しているそうで、常に集団で大空に乱舞している屍肉の掃除屋だ。

maderuelo panorámico峡谷の出口に相当する場所で、リアッサ川が大きく蛇行して包み込むような崖上にマデルエロ村はある。伝承によると、ケルト族の女神エポナを奉ったところということだ。

ティエルメス遺跡の古名テルメスは戦闘の男神名だった。エポナは豊穣と多産の女神で牝馬をシンボルとしていた。スペイン名ではマトレス matres (マデルエロの村名起源説のひとつにもなっている)またはイポナ hipona 神となる。だがここでは馬ではなく、先住民イベロ族の風習に従ってイベリア黒豚を崇めていたとわしはみている。

自然崇拝で多神教のケルト族は、陽は昇り水は流れて渦巻きをつくるというように、すべてが「流転」する思想を根底としていた。彼らの文様(装飾美術)が流動的で完璧なまでに抽象的なのはそのあらわれだろう。浅薄なわしの能力ではほんの入口しかみえてこないが、一口に言って「移行しつつあるあいまいな形」がケルト芸術なのかもしれない。その点、具象で単純化されたキリスト教美術とは対照的だ。

ケルト=イベリア族の一派アレバコ族の戦士ところで、なぜケルトとハゲワシなのか? ケルトの男はすべてが戦士。勇士は掻き切った敵将の首を油漬けにし、その数を誇った。強者の例えは空ではハゲワシだった。勇士が死ねば、だから鳥葬にした。魂はハゲワシが運んでくれ、いつの日にか再び戦士として生まれ変わってくる。屍(しかばね)はハゲワシが片づけてくれる。

この近辺の村々では、意中の女性を背負い、燃え盛る火の中や真っ赤な炭火の上をはだしでゆっくりと歩いて越える肝試しが祭り行事となって残っている。蛮勇をもてはやす、これもケルトの名残だろう。

案の定、マデルエロ村には2千年以上もさかのぼるアレバコ人時代の陰も形もなかった。でも中世期の投石器のレプリカをみたり、群から離れて村にいついてしまった変わり者のハゲワシを間近にしたり、現人口150人ほどの寒村に若いスペイン人観光客が行き来するのが明るく、けっこう楽しい遠足だった。

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