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ともやのスペイン通信 - 第77号 会計のない病院

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m_perfil.gif第77号 会計のない病院2011/06/07 8:05 pm

うっ血性心不全体験記その2・76号『我慢は美徳にあらず』の続きになります。

Silencio通話禁止や禁煙マークを眺めながら気楽に違反するおおらかな国民性。病棟の廊下に貼り付けてある、口を人差し指でふさいだ顔のイラスト標示などなんのその。清掃係から医者や看護士にいたるまで、病院側の人間でも早朝から深夜まで大声に話しまくる。しかも長々と。

とにもかくにもスペイン人は遺伝的に遊牧民の子孫として声帯が強靭だ。おかげで、救急治療室、一般病棟、どこに寝かされていようが明朗な大声で話しかけてくれるので患者は大いに元気づけられる。

集中治療室にいるあいだのことはさすがにあまり記憶にとどまっていない。以下、一般病棟の話になる。

病室はシャワー・WC・洗面所、24時間4ユーロの有料TV、センサードロップ式消毒アルコールジェル、外線からの受信専用電話つきの二人部屋が一般的。ベッド以外の家具は大型ナイトテーブル、食事用テーブルと椅子、一人掛けソファベッド(付添い人の夜のベッドも兼ね、付添い人がいない場合は毎夜廊下に出される)、鍵付きの洋服ダンス常備と4つ星のホテル並。

看護従事者は8時間交代の輪番制。10時間の延長勤務のときもあるようだが、各人の所持する免許に応じた仕事を分業分担しているし、人員も多いので忙しく、せかせか動き回ることがない。ときには世間話も交えたりして的確に対応してくれる。

点滴の他、毎回組み合わせが異なる1ダースほどの薬が処方されていた。血圧や心電図、体温測定など医療諸種専門に携わる看護士がそのコンビ薬を1回分ずつ持ってきてくれた。毎食後飲んだ水の量を質問をするのも、シャワールームにおいてあるプラスチック容器に溜めた尿量をチェックするのも彼らの仕事だった。

毎日のシーツ(ソファーベッドも)・タオル・寝衣の交換、ボディーソープによる体拭き、食事の配膳、体重・身長測定は看護助士さんの担当だった。看護士ともども青いユニフォームを身につけていたので区別がつくまで時間がかかったものだ。

部屋の清掃も日課で、係りの人は床のみでなくタンスやドアまで拭いてゆく。患者らはベッドメイキングや掃除時間を利用してよく廊下を散歩していた。人生80年。病院暮らしは初体験だ。日が経つうち、わしもその散歩組に仲間入りをさせてもらった。

高台に建てられたサン・カルロス病院の病棟には各階複数の展望室が設けられている。方角によっては廊下や病室の窓からのぞむ景色に下界の開放感が凝縮されていた。歩く余裕ができ窓辺に佇んだ。心臓疾患患者用南棟5階(日本式には6階)からの眺めは最高だった。

塩なしバゲットパン・シュガーレスジャム・脱脂ミルクにノンカフェインのインスタントコーヒー・皮付き丸ごとの果物一個の朝食からはじまる食事は、3食以外にも、午後5時におやつで飲み物とビスケットやパン類、就寝前の午後11時半にコップ一杯のジュースか冷ミルクが配られてくる。

昼食夕食のメインはサケ・タラ・スズキの魚、または脂身ゼロの赤身の牛肉ステーキと食材は高級だったが、わしの氏名入りの配膳は無塩献立だったため、こんな不味いたべものはなかった。ほとんど口にできず、娘がこっそり持ち込んでくれる自家製弁当に助けられたものだ。しかし病院の給食はメインディッシュから副えの野菜まで質量ともにレストラン並み。デザートも欠かさずついていた。献立は一週間で一巡した。

回診のドクターの他、平日の午前中は立ち代り入れ替わりいろいろな人が病室に飛び込んできた。散髪はどうですか、ひげそりをしましょうか?と床屋のおねえさんが。○○型の献血にご協力願えますか?と臨床検査科の人が。個室に入った人が何人かはわからないがアジアの人でスペイン語をまったく解さないようだ、通訳ができるか?とも。ベトナム人で、結局助けにはならなかったが…。

担当医が退院可能な体調にあると判断した日、入院を続けるか退院したいか、患者の意思に従うという姿勢で問われた。もちろん早々の退院を希望した。数時間後、入院中のすべての検査結果や対応処置、薬の一覧表、処方箋、自宅療養での注意事項などのデータとともに退院許可書を手渡してくれた。友人から教えてもらったとおり希望してみると、自宅までの送り迎え専用救急車の手配もしてくれた。

こんな至り尽くせりのスペインの公立病院でも、日本の病院と比べてないものがひとつある。それは皮肉にも「会計」とよぶ鬼門だ。手術・入院・薬はすべて無料。(退院後も)日常の健康・薬管理は患者の居住地域の医療センターに勤務する家庭医が担当し、必要に応じて自治体に点在する総合病院勤務の専門医とのコネクションをつくってくれる。スペインは、だから、なんとか医療福祉先進国に入れてもらえるようだ。

スペイン医療システムの恩恵に浴しながら、彼らのいう「一日入院したら体力の回復には8日間かかる」を肝に銘じ、夏に向かう心算でいる。[つづく]

ambulancia.gifスペインの保険制度は二本立てである。民間保険加入者のみが利用する私立病院・診療所が別途ある。旅行者の場合は海外保険、現金払い、飛び込みでも迅速対応してくれる私立病院を推薦する。

ambulancia.gif医療システムについての補足にスペイン通信第63号『病院雑感』を合わせどうぞ。

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