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第五章異端裁判

現在見るユステの僧院の建物は比較的あたらしい。二百年前にフランス軍が侵入した際、僧院にも庵にも火の手が上がり、いちじるしく損害を受けたものをフランコ時代に「カルロス一世の庵を守る会」のような団体の後押しで再建されたという。

その僧院前の自然駐車場を一段上るとゴロゴロした花崗岩の岩間をぬって小川が流れている。メジロ・ヒワ・カケスといった野鳥たちが自生したブナ林を飛び交い、私にとってはベラ地方に来たときの貴重な夏場の休息場となっている。僧院をちょうど見下ろせるかっこうな花崗岩の大岩の上で涼しい山風に吹かれ、到来物の羊羹(ようかん)が包んであった竹皮を再利用して持参してきた握り飯にかぶりつきながら絵の構想を練る。とっておきの楽しいときだ。

足元を細々と流れる清水はいかにもおいしそうに見えるが飲むことは厳禁。理由は簡単なことだ。羊も放牧できないようなスペイン山岳地帯の岩山ではたいて山羊を放牧しており、その排泄物の大腸菌などで汚染されているからだ。グレドス山脈もご多分に漏れず岩山には多くの山羊が放牧されている。手を洗う程度にしておくのが賢明だ。

万物すべて神が創りたもうたもの───組織化されたキリスト教では自然を研究することは神に対する罪悪という思想が根強い。

(五)異端裁判