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第七章ブドウ酒のコク

岩だらけの急斜面のところどころを切り拓いたペーニャ・デ・フランシア地方は今ブドウ収穫の最盛期を迎えている。

十月初旬の二週間が最適期だそうで、家族はもちろん親戚、友人まで駆りだして、栗林の合間に見えかくれする小さな畑でブドウ摘みに精を出している人たちの朝は早い。

黙々と手を動かすパブロじいさんもそんなうちの一人だった。朝日を受けて赤、黄、緑と錦に彩られた段々畑にパブロじいさんの黒いベレー帽が浮き沈みする。花崗岩の白い岩肌とどこまでも続く透明な紺碧の秋空とをバックに、パブロじいさんは中腰にかがみ、根元にぶら下がった黒紫色のブドウの房をパチパチと鋏(はさみ)を鳴らしながら切り取って箱に投げ込んでいく。十株ほど切りとると二十五キログラム入りの箱はいっぱいになる。

息子のホルヘが指を唇にあてピーピーと鳴らした。どこで草を食んでいたのか、焦茶色の年老いたロバがホルヘの合図にノソノソと畑に戻ってきた。ロバの背の両側にはL字型の鉄パイプ製荷受け台がくくりつけられている。栗の板でつくったブドウ箱を一つずつ両側に背負わされたロバは、至極当然といった顔つきで自動的に運搬用の小型耕耘(こううん)機の置いてある道に向かって下りていく。

花崗岩の巨石の露出した急斜面はゲレンデの黒コースに降り立った感じで、谷に向かって一気に落ちていく。

(七)ブドウ酒のコク