aceitera
「煙だし」のスケッチ

第八章スペイン雑想

今日はガタ山脈沿いの村へ取材に出かける予定だった。それが思いもよらぬ雨降り。勇み立っていた気持ちもなえてしまった。

私はスペインに住みついた最初の三年間は傘を持っていなかった。それでもなんとか暮らしてゆけるほど雨が少ないのだ。

現在住んでいるマドリー周辺は年間降雨量が、東京の一五〇〇ミリと比較するとその三分の一にも満たない四五〇ミリしかない。とくに六~九月の夏にはほとんど雨らしきものはやってこない。たとえ降って濡れたとしても歩いている間に乾いてしまう。傘が絶対必需品とまではならないのだ。

ところが今わが家には10本を超える傘がある。それは日本から来た人たちが持参してきたもののさっぱり出番がなく、荷物になるし面倒なので帰国するときに放っていったものばかりだ。

スペインは日本の約一・三倍の面積がある。その大部分を占めるイベリア半島本土は正方形に近い形をしており、四辺に沿うように山脈が走っている。大西洋の南西方角から吹き込む風がそれらの山脈を越えるとき南西側に雨を降らせてしまう。だから内陸は雨が少ない大陸的な気候となり、夏は乾燥し猛暑に見舞われるわけだ。

(八)スペイン雑想