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第四章水のみなもと

神聖ローマ帝国カール五世(一五〇〇~五八年)が銀のストローで岩間から湧き出る水を飲んだと言い伝えられているところがグレドス山脈の南麓にあり、ユステの僧院と呼ばれている。僧院は花崗岩でできた岩山をおおうカシノキ林の間にひっそりとたたずんでいる。神聖ローマ皇帝カール五世がなぜこんなところに来ていたのかと首を傾げたくもなるが、実はこのカール五世はスペイン国王カルロス一世その人なのだ。

ジェノバの冒険家コロンブスや、トゥルヒーリョの町の豚小屋に捨てられていたともいわれるピサーロたちによって中南米の存在を知ったスペイン人のならず者たちは、一攫千金を夢みて次々と中南米へ侵入し、略奪と虐殺を繰り返し、莫大な金銀をスペインへ持ち帰った。

その豊富な財源を湯水のごとくばらまいて皇帝の地位を獲得したカルロス一世もブリュッセルでの皇帝経営に疲れ果てていたようだ。晩年は彼の心の故郷スペインに身を寄せ、清らかな水と緑の多い静かな場所に庵を建てようと考えていた。そこでこのベラ地方の山間部に目をつけ、通風の病を癒(いや)すためユステの僧院ことヒエロニムス派修道院の南壁に庵を建増することになった(→スペイン通信第八号参照)。

(四)水のみなもと